過酸化水素の特徴と利用法

過酸化水素の工業利用

過酸化水素の利用の中でもやはり一番多いのが工業原料としての利用となります。過酸化水素全体の使用量を見てみると、製紙工業でのパルプ漂白や廃水処理、半導体の洗浄などで大量に使用しているのが実態で、それは塩素系の漂白剤を使用すると多量の廃棄物を生じてしまうのに対して、過酸化水素なら最終的には無害な水と酸素に分解するので、環境にやさしい工業利用となるからです。こうして近年での工業的な過酸化水素の利用は拡大基調にあるのです。

 

試薬用目的では、過酸化水素水は濃度30w/v%で市販されていますが、これは主に酸化剤として利用されています。ここでは過酸化水素を酸化剤として利用した環境負荷の低い新規酸化反応法などが研究されています。

 

同様に合成への利用も数多く研究されていますが、コストが高いため今のところ実用化されたプロセスはシクロヘキサノンオキシム合成など限定的で、シェアはまだまだ低い状態です。

 

エンジンの開発が行われていたこともあります。それは閉鎖系エンジンの酸素源としてのもので、ドイツのヘルムート・ヴァルター氏によって1930年頃から、酸素を発生させて内燃機関を作動させる研究が行われていました。しかし、艦船に搭載可能な原子力機関の開発と成功が先行したしことお蔵入りとなったようです。ちなみにヴァルター機関とは、第2次世界大戦末期まで軍事用に開発された水蒸気や酸素を利用する熱機関の総称となっています。